私的ルーヴル八十八宝めぐり⑦絵画篇(フランス絵画)

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やっとフランス絵画まで辿りつきました。ゴールも近いです。連日、熊本に心を寄せながら、祈るような気持ちで記事をまとめています。自分に出来ることはなにか・・コンビニに行く度にレジ横の募金箱に寄付をしたり・・マイルを寄付に交換したり・・シュタイフでくまモンキーリングを購入したり(5,000円が熊本県に寄付される)・・そして作品の売り上げの一部を熊本城再建のために寄付することにいたしました(また違う形での支援も考えています)。パリの街角動物ハンターとしては、しゃちほこの行方も気になります。。詳細は分かり次第お伝えしてまいります。よろしくお願いいたします。

2004年1月発行
芸術新潮「精選!ルーヴル八十八宝めぐり」

美術史家の小池寿子さんがルーヴルの常設展示3万6000点から88点を選りすぐり、古代エジプトからドラクロワまで、効率よく楽しく回れるよう秘密の急所を伝授した永久保存版。私のルーヴル鑑賞におけるバイブル。そのバイブルをナビに、今春、私的ルーヴル八十八宝めぐりを実現(12年ごし・・)!

本来ならパリの街角動物のまとめが先だけど、12年ごしとあっては・・ここはルーヴルを優先!余韻に浸りつつ健忘録。

結局、2日間に渡り、88のうち74の宝をみることができた・・




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≪エヴァ・プリマ・パンドラ≫
ジャン・クザン(父)1550年
油彩 板

文字には、かつてパンドラであったエヴァ、と書いてある。人類を堕落させたエヴァ、数限りない災いをもたらしたパンドラ、史上最強の2大悪女の融合である。パリ南東の離宮に花開いたフォンテーヌブロー派クザンの作品(フランスよりもイタリア・マニエリスムの伝統に属している)。背景の豊かさと相反し、頭蓋骨を弄んでいるような様相に、避けられない死を想う。ヴァニタスとは「人生の空しさの寓意」を表す静物画。バロック期の精神を表す概念だ。頭蓋骨は死を寓意。エヴァはリンゴを食べたことによって死にゆく存在になった。

バロック期の精神を表す三大概念・・

ヴァニタス(虚栄のはかなさ)
カルペ・ディエム(今この瞬間を楽しめ)
メメント・モリ(死を想え)

永遠のテーマだ。




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≪アモールの葬礼≫
アントワーヌ・カモン
1560年~1570年頃
油彩 カンヴァス

こちらもフォンテーヌブロー派の作品。今回、小池さんの案内で、好きになった一枚。黒い頭巾を被ったクピド(アモール)が、棺に乗った愛(アモール)をディアナの神殿へと運んでいる。時代を代表する詩情溢れる絵、私もこんな葬送がいい。アモールとは、フランス南東部ドーフィネの名門貴族ディアーヌ・ド・ポワチエのこと。アンリ二世の愛人だったが、王が急逝すると、王妃カトリーヌ・ド・メディシスから追放され、自領のアネの城で67歳で亡くなる。ディアーヌの娘は遺言どおり、城の近くに霊安堂を建てて母の墓とした。ディアーヌ(英名ダイアナ)は狩猟の神、神殿のファサードにその象徴である鹿の頭部の装飾をみることができる。




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≪アモールの葬礼≫
アントワーヌ・カモン
1560年~1570年頃
油彩 カンヴァス

mignon♡




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≪アルカディアの牧人たち≫
ニコラ・プッサン
1639年~1640年
油彩 カンヴァス

太陽王ルイ14世が死ぬまで身近に置いていた絵とされる。墓石らしき石には「われもまたアルカディアにありき」と刻まれている。アルカディアとはギリシャのペロポネソス半島にある高原地帯で、理想郷とされたところ。牧人たちが指を差す先にあるのは”死” 古典主義的で深い思想を背景に、ここにもメメント・モリの精神が伺える。

余談・・
この絵のあるリシュリュー翼は、リシュリュー枢機卿に由来する。リシュリューは、詩作、劇作、美術コレクター、アカデミー・フランセーズの創始者。 ルイ十三世は、このリシュリュー枢機卿と一緒に、大構想(ルーヴルの各辺を2倍に拡張する)大構想を進める。1643年、フロンドの乱が起こると、拡張工事は一時中断。乱が静まり、若き太陽王がルーヴルに戻ったのは、1654年のこと。
※フロンドの乱
フランスにおける貴族の反乱(これが最後の貴族の反乱)。 貴族勢力は打倒され、絶対王政の確立につながった。フロンド(fronde)とは当時流行していた投石器の意。





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≪聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス≫
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
1649年
油彩 カンヴァス

聖イレネは看護婦の守護聖人、聖セバスティアヌスは疫病退散の守護聖人として、ルネサンス以降、最も多く描かれた聖人像と言われている。近代以降は同性愛者の守護聖人としての信仰を集めている。3世紀のローマ、聖セバスティアヌスは、皇帝のもとで兵士として働きながらも、密かにキリスト教信仰をもっていた。友人の信徒を助けようとしたことからその信仰が露見、皇帝の命により、矢を射抜かれる。セバスティアヌスの脈をとるイネス、炎がまだその生があることを物語っているようだ。リニューアルして明るくなったシュリ―翼で久しぶりにこの絵と対面した。ラ・トゥールが好きになった。ルーヴルは、1803年、ナポレオン美術館としてスタート、初代館長ドミニク=ヴィヴァン・ドゥノンの命を受け、よりよい環境で美術作品を鑑賞できるよう、いまなお進化し続けている。




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≪ラ・フィネット≫
ヴァトー
1716年
油彩 カンヴァス

18世紀のヨーロッパはロココの時代。絵画の主題においては、男女の愛の駆け引きを主題にした風俗画が目立つようになる。ヴァトーも「雅びな宴」と呼ばれ、田園に集う愛を語り合う若い男女や、イタリア喜劇やオペラの登場人物などを描いた。テオルボ(リュートの一種)を奏でる少女は、有名な≪無関心(冷酷な男、気紛れな恋人)≫が踊りを表わしているように、音楽を表わしている。ルーヴルのサイトをみると、ラ・フィネット(悪戯好きな小娘)とある。まさにそんな表情をしている。遅咲きのヴァトーは、36歳という若さで亡くなっている。

余談・・
ちょうどこの絵が描かれた頃、1715年、歴代の王で一番長い在位を誇る、72年にもおよぶ太陽王の治世が終わりを告げる。ちなみに、英国のヴィクトリア女王は64年、清の康煕帝(こうきてい)は61年。ブルボン朝最盛期の王の墓には「好きなだけ搾取した王、高利貸しの仲間、怪しげな女性たちの奴隷、平和の敵ここに眠る。その冥福を神に祈ることなかれ。このような怪物が二度と現われないことを願う。」 と刻まれている。。啓蒙思想に感化されたルイ十五世は、1750年、リュクサンブール宮で、王室の油彩画110点を公開した。 そしてこの後いよいよその時がやってくる。。





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≪アモールとプシュケー≫
フランソワ・ジェラール
1798年
油彩 カンヴァス

気がつけば、フランス革命後の絵画に。紀元前からずっと見てくると、ついこの間のことのように思えてくる。ヴィーナスの嫉妬を買ってしまうほどの美貌の持ち主であるプシュケーに、女神の息子クピド(アモール)は恋をする。アモールから初めての接吻を受け動揺するプシュケー。プシュケーとはギリシア語で魂を意味。絵にみられる蝶はその魂の象徴。人間の魂と神の愛の結びつきという、ネオ・プラトニズム(万物は一者から流出したもの)を象徴した物語に、一種の憧れを感じる。2人の間に生まれた子供はウォルプタース(喜び)と名づけられた。




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≪アモールとプシュケー≫
フランソワ・ジェラール
1798年
油彩 カンヴァス

美しいおみ足・・♡

余談・・
1589年~1792年、200年間におよんだブルボン朝の幕がおりる。 王様がいなくなり、革命政府が誕生すると、1793年8月10日、ルーヴルは「中央美術博物館」として美術館としての始めの一歩を踏み出す(感涙・・)。一般市民が王室コレクションを鑑賞できるのは、10日間のサイクルのうち、わずか3日間に限られていた。 1803年、「ナポレオン美術館」とあらため、外交官で美術史家でコレクターのドミニク=ヴィヴァン・ドゥノンを館長に任命される。 ドゥノンは、絵画や彫刻のみならず、工芸品の収集もすすめた。ルーヴルの工芸部門は逸品揃いといわれる。ドゥノンの功績は大きい。





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≪エステルの化粧≫
テオドール・シャセリオ―
1841年
油彩 カンヴァス

化粧をしている女性は、旧約聖書エステル記のヒロイン、ユダヤの娘エステル。ハマンのユダヤ人虐殺計画を打ちあけるべく、王の宴席に向かうため身繕いをしているシーンが描かれている。当時、王への直訴は死刑を意味するものだった。アルジェリア旅行にインスパイアされたオリエンタリズム溢れる作品は、このルーヴルの壁紙ごと素敵。アングルの弟子と知り、納得。
 



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≪モルトフォンテーヌの思い出≫
カミーユ・コロ―
1864年
油彩 カンヴァス

写実主義のバルビゾン派に属し、印象派の先駆者といわれるコロー。光と霧を好んで描いたコローのこの代表作は、記憶の中の叙情的な情景、最もフランス人に愛されている絵だと聞いたことがある。


Commented by desire_san at 2016-04-20 14:37
こんにちは。
ルーブル美術館は私も一度行きまはしたが1日しか時間が取れなかったので、教科書に載っているような超有名な作品しか見てこれませんでした。私が見ていなかった作品をご紹介いただきありがとうございます。ニコラ・プッサン、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、ヴァトーは好きな画家ですが、ご紹介の作品は初めて見ました。カミーユ・コロ―の「モルトフォンテーヌの思い出」は日本に一度来たのをで鮮明に印象に残っています。またルーブル美術館に行ってみたくなりました。

私は昨年はルネサンス美術を求めてイタリアのトスカーナの街を廻りました。サン・ジミニャーノも中世にいるような魅力的な町でした。フログに私が感じたサン・ジミニャーノの魅力を私が撮った写真とともに書いてみましたので、見てくださると嬉しいです。ご感想などコメントいただけ眼と感謝致します。
Commented by cocobear-riko at 2016-04-21 00:19
desire_san さん
はじめまして
丁寧に読んでいただき、そしてコメントまで、励みになります、ありがとうございます。

ルーヴルは進化していますから、きっと何度いっても楽しめるのではないかと、今回あらためて思いました。また、今回のように、尊敬する美術史家のナビで回るのも、見る角度が変わり、刺激的でとても勉強になりました。しかもどこも空いていて、まるでルーヴルを独り占めしているような感覚に陥った時もありました(*^^*)そんな時は、絵と対話できます。あとでルーヴル宮の歴史も追記していきたいと思っています。

私はパリばかりですので、、イタリアのトスカーナ風景、あとで拝見させていただきます。

by cocobear-riko | 2016-04-20 13:39 | 1er arrt | Comments(2)

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by cocobear-riko
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